箱根芸術紀行

バス YS生

11月の3連休に第九の合宿に参加した。場所は、神奈川県箱根町芦の湯。旧東海道沿いに江戸時代からある温泉旅館「きのくにや」である。
11月3日(文化の日)と翌4日の土曜日が合宿日である。11月の三連休は、5月のゴールデンウイークに次いで箱根に客が押し寄せる。湯元温泉では、恒例の大名行列も行われる。このことを知った私は、なにかこの混雑を避け、一石二鳥の案はないかと考えた。
平成16年から五反田駅へ通っている。内回りの山手線が、五反田駅に入る手前に、ポーラ化粧品の本社ビルに、ポーラ美術館という、垂れ幕があるのがいつも気にかかっていた。箱根のどこかにあるのだが、判然としない。
そこで、インターネットで検索すると、ポーラ美術館は、仙石原にあることが判明した。ホームページの電車バスの利用の場合の案内を見て、新宿から東名高速を通る小田急バスに乗り、仙郷楼前で下車し、施設めぐりバスに乗り換えればいけることが判明した。
美術館から芦の湯までは、小涌園でバスに乗り換えればいけることが、美術館に電話して判った。ということで、10月31日に新宿の小田急ハルクにあるチケット販売所に立ち寄った。小田急バスのホームページで、時間表を調べ、始発が6時30分だが、いくらなんでも早すぎるので、7時の便にした。
9時過ぎに小田急バスを降り、乗りかえれば、開館時間からいい時間に着くものと思っていた。
まだ暗いうちに家を出かけた。新宿へは、バスの始発に間に合う時間に着いた。おかげで朝の混雑していない時間帯の街のウオッチングをすることとした。横断歩道の下、ハルクの前に、ホームレスの姿があった。
バスは定刻に発車。発車前から、東名が混雑で、1時間位遅れるとのアナウンスがあった。甲州街道から、山手通、246までは順調だった。瀬田から東名に乗ったバスは、たちまち渋滞に巻き込まれた。しかし、大和を過ぎるあたりから動き出し、70分遅れで乗換のバス停に到着。約1時間遅れで今日最初の目的地に着いた。折から、美術館は企画展で、「ドガ,ダリ,シャガールのバレエー美術の身体表現」をやっていた。
受付でチケットと音声ガイドを借り、エスカレーターで降りると下の二つのフロアが展示場所である。化粧道具ー世界の櫛-日本、アフリカ、オセアニアでは、江戸時代高級遊女が使った鼈甲に金細工をしたものが印象に残った。
次の部屋では、東洋陶器ー画家の愛したやきものー鑑賞陶器のはじまり。景徳鎮のものや色鍋島らの見事な陶器磁器と一緒に、安井曽太郎や梅龍の東洋陶器を 使ったバラの花がみごとだった。
ここで、昼食の混雑を避けるためと朝早かったのでお腹が空き、レストランへ。11時過ぎ。すでに一組の客。コース料理を注文する。こつこつという音をして静かに歩く足音。メニューを説明するボーイの声。向かいの山は、紅葉が少し始まっており、その緑と赤の色彩の中から、雲が湧いているさま。よく耳をすませば聞こえるクラッシク音楽。お待たせしましたの声で、ウエイトレスが洋皿を置く。肉とポテト他。ソースが微妙。パンもほどよい。ミルク紅茶を飲み満足して後半に赴く。
ドガは、バレリーナの油絵で有名。昔パリの印象派美術館で見たことを思い出す。多くの油絵の中に、ドガのブロンズ像のスパニッシュダンスの大胆で優雅な曲線。ドガは、この作品を発表することは考えておらず、死後アトリエから発見された破片から修復されたものである。
シャガールのダフニスとクロエ物語につけた小さな版画の数々。会場には、ラベルのダフニスとクロエが流れる。色彩と独特な人物表現に感心する。
ルオーのスペイン女もいい。好きになれないダリは、通過するだけ。どの会場も大きな声で話すマナーの悪い客が多い。
宿には、練習開始前に到着。温泉がいい。練習は、精鋭ぞろいで、実に丁寧に練習できた。
懇親会での自己紹介でそれぞれの第九に対する思い入れが判る。先日、前原先生の演奏会の日にピンチヒッターで来られた冨田先生が高野先生の大学時代の同級生だったとは。
翌日の、前原脱線音楽講座は、転覆する寸前で練習に戻る。時代と共に上がってきた、ピッチの話に感心する。リヒャルト・シュトラウスやメンゲルべルグ。ピッチを調整できるCDプレイヤーがあるのには驚いた。なぜ段々上がるのかの問いに、派手になるから。魔笛で歌う夜の女王役は、ピッチが上がるに連れて、歌える人が少なくなっているなど面白かった。
私にとって、この2日間は、目から鱗であった。

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